タイでプーケットのコンドミニアム購入を検討している日本人にとって、気になるのは「今、市場で何が起きているのか」という点だろう。答えはシンプルだ。2026年第1四半期、外国人へのコンドミニアム所有権移転は3,241戸で前年比17.3%減、移転総額も13.464億バーツまで17.9%縮小した。ただし内訳を見ると様相はまったく異なる。中国人購入者の勢いが失速する一方、ロシア人購入者が急速に存在感を強めているのだ。
海外から東南アジア市場を眺める投資家にとって、これは一過性の流行ではなく、市場が成熟段階に入ったことを示すサインと捉えるべきだろう。世界有数の経済大国2カ国からの資金が、短期的な縮小局面でも一つのセグメントに継続的に流入している。これはもはやタイが「エキゾチックな新興市場」ではなく、長期資本の受け皿として十分なインフラを備えた投資先になったことを意味する。
結論を先に:2026年第1四半期の市場動向
2026年第1四半期、タイの外国人向けコンドミニアム市場は全体としては縮小したが、購入者の顔ぶれは大きく入れ替わった。中国人購入者は906戸(前年比38.8%減)、金額にして34.93億バーツ(同42.9%減)と急速に勢いを失った一方、ロシア人購入者は383戸(同33%増)、16.65億バーツ(同68.7%増)と躍進し、これまで2位だったミャンマーを追い抜いて中国に次ぐ第2位に浮上した。全体として外国人1人あたりの購入単価も上昇傾向にあり、より高価格帯の物件へのシフトがうかがえる。
中国人購入者:依然トップだが失速が鮮明に
中国人購入者は今なお外国人購入者全体で最大のグループだが、その勢いには明らかにブレーキがかかっている。従来、中国人投資家はバンコクのBTS・MRT駅近くの新築プロジェクトを好んで購入してきたが、中国国内の経済的なプレッシャーを背景に、2026年第1四半期は取引戸数が前年比38.8%減、取引額は42.9%減という大幅な落ち込みを記録した。
ロシア人購入者:中国に迫る存在感、プーケットが主戦場に
一方でロシア人購入者の動きは対照的だ。2022年以降、ロシア人投資家はドバイやキプロスに向けていた資金を東南アジアへと大きくシフトさせており、その主要な行き先がプーケットとサムイ島である。2026年第1四半期だけでロシア人の取引額は68.7%も増加しており、これは単に購入者数が増えただけでなく、よりハイエンドな高級物件へと購入層がシフトしていることを示している。特にプーケットではロシア人による取引額が最も高く、156戸で総額10.6億バーツに達し、その多くがアッパークラスのリゾートエリアに集中している。
中国・ロシア以外の動き:インド人購入者の台頭
中国とロシア以外にも注目すべき動きがある。同じ四半期において、インド人購入者の取引は前年比40%増の63戸、金額にして約3.53億バーツに達した。規模はまだ小さいものの、外国人購入者の裾野が着実に広がっていることを示す指標として見逃せない。
外国人はタイのコンドミニアムを完全所有できるのか
ここで基本的な法律面を確認しておきたい。1979年施行のコンドミニアム法(Condominium Act B.E. 2522)により、外国人は海外から外貨で送金することを条件に、コンドミニアムの区分所有権(フリーホールド)を完全な形で保有できる。受け取り側のタイの銀行が外国送金取引証明書(FET Form)を発行し、この書類がなければ土地局(Land Department)は所有権移転の登記を受け付けない。また、建物ごとの外国人保有比率には上限があり、CBRE Thailandによれば、一つのコンドミニアム棟における販売可能面積の49%までしか外国人は所有できない。バンコクやプーケットの人気プロジェクトでは、このクォーターが竣工前に埋まってしまうケースも珍しくない。
価格動向と為替の安定性
タイ銀行(Bank of Thailand)のデータによると、バンコクのコンドミニアム価格指数はこの5年間で約25〜30%上昇している。プーケットでは開発可能な土地が限られていることから、上昇幅はさらに大きいとされる。為替面では、タイバーツは対米ドルで34〜36バーツ台という比較的安定したレンジで推移しており、ドルや人民元ベースで動く投資家にとって為替リスクは相対的に抑えられている。
賃貸利回りとプーケットの見通し
観光地エリアのコンドミニアムでは、年間グロス利回りがおおむね5〜8%程度で推移している。Knight Frank Thailandの分析では、プーケットの高級ウォーターフロント区画は2026年に入っても底堅く推移すると見られており、その背景には継続的な外国人需要、地価上昇、そしてブランド付きレジデンス(ホテルブランドが運営に関わる高級物件)への強い関心がある。バンタオ(Bang Tao)、レイヤン(Layan)、カマラ(Kamala)、チェーンタレー(Cherng Talay)といったエリアのヴィラは、純粋な投資目的というよりもライフスタイル志向の富裕層バイヤーから支持を集めている。
取引にかかる税金と維持費
購入時にかかる主な費用は、鑑定評価額に対して所有権移転手数料2%、印紙税0.5%、そして売主の所有期間が5年未満の場合に課される特定事業税3.3%である。これらは通常、買主と売主で分担する。保有後の維持費としては、共益費(common area fee)がプロジェクトのグレードに応じて1平方メートルあたり月40〜120バーツ程度かかり、シンキングファンド(修繕積立金)は所有権移転時に一括で支払う仕組みになっている。
FAQ:日本人バイヤーがよく抱く疑問
外国人はタイのコンドミニアムを完全所有できますか?
はい。ロシアや中国からの購入者を含め、外国人はコンドミニアムの区分所有権を完全な形(フリーホールド)で保有できます。重要な条件は、購入資金を海外から外貨で送金し、受け取り銀行がFET Form(外国送金取引証明書)を発行することです。この書類がないと土地局での登記ができません。
なぜ外国人購入者はヴィラよりコンドミニアムを選ぶのですか?
タイの法律では外国人が土地を直接所有することは認められていません。コンドミニアムはフリーホールドでの直接所有が可能な唯一の不動産形態です。ヴィラの場合は通常30年の定期借地権(リースホールド)方式か、タイ法人を設立して所有する方式が取られますが、いずれも追加の法的リスクを伴います。
プーケットのコンドミニアムでどのくらいの利回りが期待できますか?
11月から4月のハイシーズンには、バンタオやスリンといったエリアのコンドミニアムでグロス年利回り5〜8%程度が見込めます。光熱費や税金、管理費を差し引いたネット利回りはおおむね4〜6%が目安です。あくまで市場全体の傾向であり、個別物件の立地や運用方針によって変動します。
不動産を購入するのにビザは必要ですか?
いいえ。不動産の購入とビザステータスは連動していません。ただし所有権を持つこと自体が自動的に居住権を与えるわけではない点に注意が必要です。長期滞在を希望する場合は、就労許可、リタイアメントビザ(O-A)、タイランド・エリートビザなど、別途要件を満たすビザの取得が必要になります。
市場に参入する際の最低予算はどのくらいですか?
パタヤではスタジオタイプが150万〜200万バーツ程度(為替レート35.5で計算すると約42,000〜56,000米ドル)から購入可能です。バンコクやプーケットで流動性の高い好立地の物件を探す場合、目安として300万〜400万バーツからのスタートとなります。
ロシア人購入者の急増は、中国人需要の減速と同時に進行している点で、一時的な現象ではなくタイの外国人向けコンドミニアム市場における構造的な変化を示していると言える。実務上のポイントは変わらない。外国人クォーターが確保されていることを確認できるプロジェクトを選び、交通インフラに近い流動性の高いエリアに絞り込み、そして必ずライセンスを持つ弁護士を通じて書類を確認してから頭金を支払うことが重要だ。タイ不動産では、こうした市場動向を踏まえた物件選びのサポートを行っている。
出典:Bangkok Post
