金曜のニューヨーク市場引け後、香港ハンセン指数は2.2%上昇して取引を終えた。これはアジア主要市場の中で最大の上昇率だった。ソウルは1%超、東京も上昇して取引を終えている。いずれの市場にも企業業績や個別ニュースの動きはなかった。投資家が一斉に見直したのは、米国の金利見通しだけだった。
結論を先に言うと、これはすでに出たデータへの反応ではない。FRB(米連邦準備制度理事会)関係者の慎重な発言を受けて、投資家が「近いうちの利上げ」という賭けを縮小させただけの動きだ。米国債利回りが下がり、株価が上がり、その流れがアジアに時差で伝わった。重要な注意点がある。これから発表される米雇用統計と、来週予定されている消費者物価指数(CPI)の内容次第で、この構図は一夜にして反転しかねない。
何が起きたのか:結論から言うと
- 香港:2.2%高 で取引を終え、アジア主要市場の中で最大の上昇率。
- ソウル:1%超の上昇、東京および他の複数のアジア市場も上昇して終了。
- 米国市場では ダウ、ナスダックともに前日比で1%から1.2%程度の上昇、ロンドンFTSE100指数も約0.7%高。
- 日本円が上昇。理由は日銀の利上げ観測であり、米金利観測とは別の要因。
- 原油価格が上昇。これは急速なディスインフレ(インフレ鎮静化)というシナリオとは矛盾する動き。
- すべては今後発表される 雇用統計(非農業部門雇用者数) と来週の CPI にかかっている。
なぜアジア市場は独自の材料がないのに上昇したのか
米国市場の引けが直接のきっかけだった。ダウとナスダックがそれぞれ1%から1.2%程度上昇し、米国債利回りが低下した。アジア市場はその数時間後に取引を開始し、単純にその流れに乗った。これはアジア市場特有の現象ではなく、独自の材料がない日にはよく見られる典型的な連動の仕組みだ。
FRB高官の発言は実際には一枚岩ではなかった。ある当局者は慎重姿勢を示し、別の当局者は追加利上げの可能性に道を残した。つまり中央銀行として統一された見解はまだ存在しない。市場が反応したのは、この「慎重派の発言が目立った」という一点だけだ。
香港の2.2%高は今後のトレンドを示すのか
答えは、示さない。重要な経済指標の発表を控えたタイミングでの1日限りの大幅な動きは、多くの場合、トレンドの転換ではなく持ち高調整を反映しているにすぎない。実際、一部のトレーダーはデータ発表前にショートポジション(売り持ち)を解消していたにすぎず、長期的な買いポジションを積んでいたわけではない。
この水準が雇用統計後も維持されるかどうかが、本当の試金石になる。ここに、もう一つの矛盾も存在する。市場は「FRBが緩和的になる」という見通しと「原油価格の上昇」を同時に織り込んでいるが、この二つは長期間共存しにくい組み合わせだ。原油高が続けばインフレ期待が再燃し、FRBの慎重姿勢という見立てそのものが崩れる可能性がある。
ロイターの同時点の市場報道によれば、原油価格の上昇は中東情勢の緊迫化に結びついているとされる。中央銀行にとって、これはほぼ最悪の組み合わせだ。市場が緩和を期待している最中に、インフレ圧力が高まっているのだから。
なぜ原油高は株式市場にとって悪材料なのか
原油価格が上がると、サプライチェーン全体でコストが上昇し、インフレを助長する。インフレが高止まりするほど、中央銀行が緩和に踏み切れる余地は狭まる。今回の株式市場の上昇は、まさにその緩和シナリオに賭けたものだったため、原油高はその賭けの前提を静かに切り崩す要因になる。
筆者の見立てとしては、1日の値動きだけを根拠に投資判断を組み立てるのはあまり意味がない。しかし「原油高とインフレ再燃」という組み合わせは、注視する価値がある。このペアが今後数カ月のドルの方向性を大きく左右し、ドルの動きはアジア資産の買い手にとって極めて重要な意味を持つからだ。もし投資のホライズン(想定期間)が6カ月未満で、レバレッジを使って取引しているなら、ここで述べていることの前提はほぼ当てはまらないので注意してほしい。
円高と日銀の利上げ観測は何を意味するのか
円の上昇は、日銀が利上げに向けて準備を進めているという観測から来ている。これはFRBの動きとは直接関係のない、日本国内特有の要因だ。市場全体のリスク選好とは異なる仕組みで動くため、必ずしも他のアジア資産と同じ方向に動くとは限らない。
これは、アジアの通貨がドルと同じ方向ではなく、逆方向に動く珍しいケースでもある。支出をある通貨で、収入を別の通貨で管理している人にとって、こうした瞬間は、どんな指数予測よりも重要な意味を持つことがある。
ドルの為替レートはアジアの不動産購入者にどう影響するのか
影響が及ぶのは「参入コスト」の部分だ。ドルが強いと、現地通貨で価格が付いている資産は割安に見える。ドルが弱いと、その逆になる。数カ月単位の短期的な取引では、通貨の変動が、デベロッパーが提示する値引きよりも大きな影響を持つことが多い。
プーケットの不動産市場にとって、今回のような一日の値動きは株価そのものよりも、通貨の背景要因として重要だ。タイバーツが強くなれば、ドル建ての資産を持つ買い手にとってタイの不動産への参入コストは上がる。バーツが弱くなれば、逆に有利に働く。ドル・バーツのレートを注視している投資家は、契約直前に慌てて渡航予約を入れるのではなく、通貨が有利なタイミングに合わせて内覧の旅程を組む傾向がある。FRBが明確な方向性を示すまでは、購入予算は自国の貯蓄通貨ではなく、決済に使う通貨(タイバーツまたはドル)で管理しておくほうが賢明だろう。
この点はタイ不動産としても、日本の買い手に繰り返しお伝えしている実務上のポイントだ。
よくある質問
Q. アジア市場に独自のニュースがないのに、なぜ株価が上がったのか? A. 米国市場の引けの動き(ダウ、ナスダックが1%から1.2%程度上昇し、米国債利回りが低下)がきっかけだった。アジア市場はその数時間後に取引を開始し、その流れに単純に乗った形だ。
Q. 雇用統計(非農業部門雇用者数)とは何で、なぜ市場はそれを注視するのか? A. 米国の非農業部門における雇用状況を示す月次統計で、労働市場が過熱しているかどうかを示す指標になる。FRBがインフレリスクをどう評価するかに直結するため、市場の関心が非常に高い。
Q. 香港の2.2%高は、上昇トレンドの始まりを意味するのか? A. いいえ。重要な経済指標の発表前に見られる1日限りの大幅な動きは、多くの場合トレンドの転換ではなく持ち高調整を反映したものにすぎない。実際の方向性の確認は、雇用統計とCPI発表後の市場の反応を見てからになる。
Q. 円が強くなったのはなぜか? A. 日銀が利上げに踏み切るという観測が背景にある。これはFRBの決定とは直接結びつかない、日本国内特有の要因だ。
出典:ロイター
