「送金はできたのに、なぜ登記できないのか」。この質問は、プーケットの土地事務所でロシア国籍のバイヤーから最も多く出るものだ。答えはシンプルで、フリーホールド(外国人所有権)でコンドミニアムを登記するには、外国通貨がタイ国内で実際にバーツへ両替されたことを示すFET(Foreign Exchange Transaction)証明書が必須であり、現金を持ち込むだけではこの証明書は発行されない。
ロシアによるタイの不動産購入自体は、どちらの国の法律でも禁止されていない。問題は常に、資金がどう国境を越え、どんな書類の痕跡を残すかという点にある。
ロシア主要銀行のSWIFT切断後、資金移動はどう変わったか
多くのロシアの銀行がSWIFTから遮断されて以降、海外不動産向けの決済インフラはゼロから作り直されている状況だ。決済代行業者、第三者名義の送金、現金持ち込み、暗号資産の経由など、様々な代替手段が生まれた。これらの一部は連邦法173-FZ(通貨規制・管理法)の範囲内に収まるが、一部はロシア刑法第193.1条に危険なほど接近する。
一方でタイ側も要件を厳格化している。土地局は、外国通貨が実際にタイ国内に入り、タイ国内でバーツに両替されたという証拠を求めている。この2つの規制システムが交差する地点で、購入者のトラブルの大半が発生する。
合法的な支払いルートは何がある?
合法的な資金移動には3つのルートがある。
- ロシアの銀行にある購入者本人の口座からの送金
- 申告済みの海外銀行口座からの送金
- 出入国時にそれぞれ申告した現金の持ち込み
ただし現金だけではタイ側の要件を満たせない。フリーホールド登記には必ずFET証明書が必要で、これは海外通貨がタイの銀行内でバーツに両替されたことを確認する書類だ。物理的に持ち込んだ現金からはこの証明書が発行されない。
決済代行業者を使うこと自体は許容されるが、個人向け取引の許可を持つ業者に限られる。法人向けの対外貿易免許を持つ業者は対象外だ。
FET証明書がなければ何が起きるのか
FET証明書は、外国通貨が海外から到着し、タイ国内でバーツに両替されたことを銀行が確認する書類である。これがなければ、土地局は外国人によるコンドミニアム所有権登記を認めない。
興味深いのは、これがフリーホールドだけの問題ではないという点だ。プーケットの複数の土地事務所は、30年のリースホールド(賃借権)登記であっても、長年この証明書の提示を求めてきた。したがって、現時点でリースホールドしか予定していない場合でも、FETが取得できる形で資金を組んでおくべきだ。将来的にフリーホールドへの切り替えや別の物件購入を検討する際、この一手間が大きな差になる。
決済代行業者を使う際、契約書のどこを確認すべきか
最も重要な書類は、**サービス契約書(委任状/代理契約)**であり、そこには目的が明確に「不動産代金の支払い」と記載されていなければならない。「送金サービス」でも「物品供給」でもいけない。
この点を軽視した結果が、市場で最も多いミスにつながる。実際にはコンドミニアムを購入しているにもかかわらず、資金が商品や機器の代金として送られてしまうケースだ。これは名目を偽った送金にあたり、資金の本国送還命令、ロシア行政法第15.25条に基づく罰金、金額が大きい場合は刑法第193.1条に基づく刑事責任にまで発展するリスクがある。契約書に記載された支払い目的を必ず読み、「goods(物品)」という言葉が出てくる取引からは手を引くべきだ。
もう一つ見落とされがちなのが、送金者の連続性が途切れるケースだ。ロシア国内ではある会社が資金を受け取るが、タイのデベロッパーに届く時点では全く無関係の別法人からの送金になっている、という状況が起こり得る。最終的な支払人が契約書に明記されているかを確認し、過去に完了した送金の実例を業者に見せてもらうべきだ。
加えて、購入者本人と無関係な第三者からの支払いも、タイのデベロッパー側が受け取りを拒否する傾向が強まっている。支払い目的の記載には、購入者のフルネーム、プロジェクト名、部屋番号を含めるべきだ。
業者選定では、登録番号と詳細情報、代理契約書、個人向け取引を扱う権限があることの証明、過去の送金実例の提示を求めよう。現金の受領証がない場合、それは撤退のサインだ。受領証は、その業者がロシア国内で透明性を持って営業していることを示す最もシンプルな指標である。
手数料はどれくらいかかるのか
市場の手数料は取引額のおよそ**1〜2.5%に加え、両替スプレッドが乗る。業者間の価格差は取引予算の1.5%**に達することもある。1%の手数料差を節約するために、名目を偽った書類で取引を組む価値は決してない。これは筆者個人の見解だが、この業界を見てきた経験からは断言できる。
暗号資産での支払いはどう扱われるのか
173-FZのもとでは、デジタル資産はロシア通貨にも外国通貨にも該当しない。明確な禁止規定はないが、ロシア側でこれを裏付ける書類も存在しない。将来、資金を本国に送還する際に税務当局へ資金の流れを完全に説明できる場合に限り、暗号資産の利用を検討すべきだ。説明できない場合は、この選択肢は避けるほうがいい。
「見えないままでいる」戦略は通用するのか
誰も見ていない間は、何の問題も起きない。しかし精査が入るタイミングは決まっている。離婚、税務調査、そして売却後に資金をロシアへ送還しようとする瞬間だ。
不適切な形で組まれた支払いの問題は、多くの場合、資金がタイに入る時点ではなく、出ていく時点で表面化する。物件を売却して資金をロシアに戻す際、資金がどのように国外に出たかを説明する必要が生じる。適切な支払い指示書がなければ、その説明はすぐに破綻する。
契約書、受領証、支払い指示書、FET証明書、デベロッパーの確認書。この一式をすぐに整え、およそ10年間保管しておくべきだ。
2026年の業界の助言は一貫している。理想的には、購入者本人が保有する第三国の銀行口座から外国通貨で送金し、タイの銀行に直接入金する。タイの銀行はその資金をバーツに両替し、購入者本人の名義でFETを発行する。この名義が権利証に登記される人物と一致していることが重要だ。
FAQ
ロシア国籍者は2026年もプーケットのコンドミニアムを購入できるのか?
可能だ。禁止規定はない。外国人はコンドミニアム全体の居住可能面積の**49%**の枠内でフリーホールドを保有でき、残りはリースホールドまたはタイ法人を通じた構造で保有される。
現金を持ち込んでデベロッパーに直接支払うことはできるのか?
現金の持ち込み自体は可能だ。EAEU(ユーラシア経済連合)出国時は10,000米ドル、タイ入国時は20,000米ドルを超える場合に申告が必要となる。ただしこの支払い方法ではFETが発行されないため、フリーホールド登記はできない。
海外に183日以上居住している場合、ロシアの通貨管理規制は適用されるのか?
支払いが海外口座から行われる場合、ロシアの銀行は取引に関与しない。ただし、海外口座を開設した際にロシア連邦税務局へ通知する義務は残る。一部の報告義務は、その年に183日以上ロシア国外に滞在していた者については免除される。
支払いの目的欄には何を記載すべきか?
購入者のフルネーム、プロジェクト名、部屋番号を記載する。フリーホールドかリースホールドかの明記が必要かどうかはデベロッパーによって異なるため、個別に確認が必要だ。
初回の購入の場合、実際にプーケットへ足を運ぶ価値はあるのか?
初めての購入であれば、その価値は大きい。物件の内見、弁護士との面談、デベロッパー事務所での対面署名は、数ヶ月に及ぶ書面のやり取りを省略できる。タイ不動産では、こうした現地での手続きのサポートも行っている。
出典:Realty-Phuket.com
